3割とのつきあい
世の中には敗者と勝者と傍観者が存在する。日常的な生活にも仕事にも
つきまとうものである。ほとんどの場合、第三者の傍観者であることが多
い。実際の仕事となると、編集者は敗者の連続である。
担当する書籍はほとんどが、あまり売れないという事実に直面している のが実情である。つくる本、つくる本が売れないとうんざりする。それで も発行点数や発行金額に年間のノルマがあり、つくり続けなければならな い。こんどこそはと根気よく継続していると、ときどきヒットすることが ある。うれしいことも、たまにはやってくる。プロ野球の打者は、3割打 てれば一流といわれている。逆にいうと7割は凡退しても、文句はないよ うである。編集者も同様らしいことがわかった。3割のヒットのなかにはバンドヒットもあるし、たまには出 会い頭のホームランもある。 いつも力んでホームランばかりを狙っていては、三振の連続となり、ス ターティングメンバーから外されることになる。編集の世界では、増刷移 行率という用語がある。担当した書籍が一定期間内に増刷した割合を示す 数値である。発行後毎月のように連続して増刷するのはホームランであり、 数年に一回増刷するのはバントヒットである。増刷移行率が3割を維持で きれば、たぶん一流の編集者と評価されるだろう。それだけ本は売れない のである。 作家やライターも同様だろう。執筆した本が3割ヒットすれば、依頼が 途切れることはないだろうし、収入も確保できる。初版だけでは印税収入 は知れている。継続して、3割を維持することが出版界の目標値である。 そう考えると気が楽になるが、実現はむずかしい。 ●前のページへ |