新聞業界の表と裏最近では、消費者も賢くなって無礼な新聞勧誘員に対しては、呼び鈴を 鳴らした相手を確認してから「うちは結構です」ときっぱり拒絶し、玄関 の扉を開けないケースも多い。なかには景品の内容によっては短期間の購 読契約をするしたたかな消費者もいる。それでも新聞勧誘員の押しの強さ に圧倒されて、必要としない新聞の購読契約をさせられてしまう人も少な くないようだ。いずれにしても、新聞勧誘員のイメージは依然としてよく 思われていない。 先日、奈良の小学1年の女の子を連れ去って殺害した新聞販売所従業員 の男が逮捕された。過去にも女児へのわいせつ行為を重ねて、実刑判決も 受けていた要注意人物だった。逮捕時は毎日新聞の販売所に勤めていたが、 それまでも産経新聞、朝日新聞、読売新聞の販売所を転々としてきたとい う。朝日新聞や読売新聞の販売所では「勤務状態が悪い」という理由で解 雇されていたのに、毎日新聞の販売所にもぐりこめたわけで、その人事管 理の甘さは問われるべきだろう。 各紙の社説でもこの犯罪を取り上げている。逮捕翌日の朝日新聞朝刊の 社説は「性犯罪から子供を守れ」という見出しで、事件の経過などを述べ、 子どもに対する性犯罪は各国の悩みだとし、「この種の犯罪への対策に、 本腰を入れなければならない」と誰でもが当たり前に思うことを結論とし ている。景品を一切もらわず20年以上も朝日新聞を購読している立場から 言わせてもらうとうまくまとめようとする文章テクニックより、もっと厳 しい糾弾の社説を書いてほしいと思う。 しかし、当事者の毎日新聞の社説は「2004」と題してこの1年の日本の 政治を振り返っているだけ。1面で広報担当が「痛恨の極み」と謝罪し、 今後さらに販売所への管理強化を指導していくとコメントをしているけれ ど、わずか10数行のベタ記事だ。この新聞社はどうなっているのだろう。 こうした新聞販売所の従業員による犯罪が発生すると、新聞販売所に対す る世間の目はさらに冷ややかになる。毎日、朝早くから起きて配送車を待 ち受けて到着するやいなやチラシを新聞に折り込み、自転車やバイクで配 達に向かう販売所のスタッフの仕事はけっして楽ではない。早朝にウォー キングしていると配達中の主婦などによく出くわすが、「おはようござい ます」と声をかけてもらうことも多い。私のなかでは新聞配達人への親し みが増していただけに、今回の残虐な犯罪は許せない。 新聞の部数を増やすことは新聞社にとって生き残るための戦略でもある。 部数が多ければそれだけ広告収入も増えるからだ。部数を確保するために 組織的な拡張団や販売所の従業員などが家庭を訪問して契約を取るという 方法が一般的に知られているけれども、引越し後に近くの販売所に直接電 話などで申し込む消費者もいる。 また、フリーダイヤルで購読の申し込みを受け付ける代行会社も存在す る。テレビCMやタウンページのフリーダイヤルを使って購読を申し込む 消費者も結構いるらしい。また、新聞勧誘員や販売所への苦情も多いよう で、たとえば読売新聞の勧誘員と名乗る者から景品を渡されたあとに、契 約印を押したら朝日新聞の申込書だったという詐欺的商法もあるという。 逆に朝日新聞の勧誘員のフリをして読売新聞の契約を取るというケースも あるのだろう。 購読申し込みを受け付けると、近くの販売所に連絡し配達の手配をして もらうのだが、新聞社の本社に報告する場合もある。苦情などを受け付け ると、対応したスタッフ(主にアルバイト)が報告書にまとめて会社に提出 するシステムになっている。なかには「勧誘員の態度が悪い。警察に言う ぞ」というような怒りをぶつけてくる者もいるそうで、そういう場合は 「お宅の判断でご自由にどうぞ」(元スタッフ)と答えるそうだ。嫌がらせ の苦情はともかく、まともな苦情については新聞社で分析し、対応策を講 じていればもっと新聞勧誘員や販売所のイメージはアップしているはずな のだが。 今年の各紙の新年号も分厚いものになった。カラーページが多く、イヤ というほど広告も入っている。地球規模のテーマ特集もある。一見、大手 新聞は不滅のような存在感を示しているものの、「主なニュースはインター ネットで読めばいい」という人も若い世代を中心に増えている。「インテ リが作ってヤクザが売る」という業界の構造改革にも本腰を入れなければ、 これから新聞離れに拍車がかかってくるのではないだろうか。 |