はぐれ記者のマスコミ見聞録  植野満

独立・開業の落とし穴

失業率が5%を超えた。1カ月に1時間でも働けば、失業者としてカウ ントされないそうだから、実質的な失職者となるともっと大きな数字にな るはずだ。最近の就職状況によると、中高年層はもちろん、35歳以上に なると転職も”狭き門”になっているようだ。だから「就職がムリなら、 自分で独立しよう」と考えるひとが増えるのも当然の成り行きだろう。
 しかし、サラリーマンからいきなり商売人に転身しても成功する確率は 低い。強い商品力と販売力を持っていなければ、商売相手との競争に勝ち 抜けないからだ。
 手っ取り早く独立・開業しようと思えば、コンビニに代表されるような フランチャイズビジネス(FCビジネス)に参入することである。このビ ジネスは、一定の資金があれば、商売のノウハウを持っていなくても、加 盟金などを支払えば、本部から商売のノウハウなどが提供されるので、まっ たくゼロから出発するよりも成功の確率は高くなる。
 もちろん、多額の資金をつぎ込んで加盟店になっても、だれでも成功す るとは限らない。むしろ失敗するケースが多いのである。商売をする場合 は、サラリーマンよりはるかにリスクが高く、失敗したときはサラリーマ ンでは返済できないほどの借金を負って倒産するというリスクがある。だ から、フランチャイズ本部を選ぶときは慎重にしなければ、何百万円、何 千万円をドブに捨てるだけでなく、さらにそれを上回る借金を負うことに なる。
 フランチャイズビジネスの市場規模は、着実に成長している。業界団体 の今年3月末の調査によると、本部数は1000本部を超え、加盟店舗数 は前年より約3%増えて20万店舗を突破したという。 総売上げは17 兆7500億円で、前年より3%以上も増えている。この不況下のなかで は、まだ健闘している業態といえるだろう。最近の傾向をみると、100 円ショップ、携帯電話・パソコンショップ、中古書籍販売、リサイクル ショップなどが成長を続けている。
 以前、ビジネス雑誌の編集部にいたころ、こうしたフランチャイズビジ ネスを展開している本部や加盟店を頻繁に取材していた。また、加盟店に なって独立したいという読者の相談にも応じていた。
 相談を受けるときに、まず独立希望者が質問することは、「どういう商 売が儲かりますか?」というものだった。彼らには「こんな仕事で独立し たい」、「この仕事が好きだから」という発想はなく、金儲けのできる商 売ばかりを探しているように思えた。こうしたひとたちは本部の甘い誘い に騙されやすく、また独立しても失敗する可能性が高い。なぜならば、本 部は加盟店を拡大することで売上げ(加盟料、ロイヤルティーなど)が増 えるわけだから「もちろん儲かりますよ」と熱っぽく勧誘するからである。
 そして、独立希望者はその仕事に惚れ込んで開業したわけではなく、 「お金儲け」が目的だから、予想通りの売上げがないと、「本部に騙され た」と怒り、本部とトラブルを起こしたり、撤退することになる。加盟店 になったからといって成功が保証されたことにはならないのである。
 フランチャイズ本部といっても玉石混淆で、数人規模の加盟金目当ての 怪しげな本部も存在する。
 たとえば、こんな本部もあった。東京にあるその本部は、新聞や雑誌に 加盟店募集の広告を出し、読者からの問い合わせや加盟店への応募を受け つけていた。広告を見た地方の読者から電話がかかってくると、専任の担 当者は「待ってました」とばかりに饒舌に勧誘するのである。最後に問い 合わせてきた独立希望者が「加盟店になるかどうか、ちょっと考えてみま す」と結論を待ってほしいと告げると、担当者は「お宅のエリアにはもう 一名、加盟店になりたいという希望者がいます(もちろんウソ)。わが社 は加盟店さんの利益を優先的に考えていますので、このエリアは一名に限 定しているのです。だから、急がないと」とたたみ込むようにしゃべりま くる。結局、その日にすぐ新幹線で上京し、契約するように強引に説得し たのである。このように契約を急がせる本部は、加盟金を目当てにしてい る自転車操業の本部と判断してまず間違いない。
 もちろん、こうした悪質業者は一部だが、独立希望者サイドに落ち度の あるケースも少なくない。まず、本部の実態をできる限り調べて、契約前 には既存の加盟店を何店か本部に紹介してもらい、直接その加盟店の責任 者に売上げ状況などを聞いてみるなどの事前調査を行うことだ。加盟店を 紹介してくれない本部は、加盟店に対するフォローを軽視しているか、そ のビジネスの実態を知られたくないか、あるいは繁盛店がひとつもないな どの理由で拒否するわけだから、これも要注意である。
 独立・開業をめざす挑戦者たちを応援したい。でも、多額の資金をドブ に捨てるようなことがないように、「焦らないで商売探しをしましょう」 と老婆心ながら提言しておきたい。

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