はぐれ記者のマスコミ見聞録  植野満

人気作家の納税額

 先日、「2001年度高額納税者」が公示された。高額納税者のことを、 少額納税者の身分であれこれいうのはおこがましい気持ちもあるが、やっ ぱり他人の懐具合には興味がある。
 作家部門では、十津川警部シリーズなどで知られる西村京太郎が4年連 続の1位となった。しかし、躍進ぶりが目立つのは2位の宮部みゆきだ。 順位は前年度3位からひとつあげただけだが、その上昇度はすごい。納税 額は前年度の約2倍の1億4566万円となり、1位の西村京太郎との差 はわずか1400万円(といっても私の数年分の年収になる)。年収も2 倍弱の4億円(推定)を超え、その差を約3000万円に縮めた。
昨年刊行された「模倣犯」(小学館)はベストセラーとなり、今年に 入っても売れ行きは落ちていない。すでに販売部数は90万部を突破し、 100万部に乗せるのは時間の問題だ。宮部みゆき原作の映画『模倣犯』 (森田芳光監督)も6月8日、全国東宝系で公開されることになっており、 今年度は西村京太郎を抜いて1位になる可能性もある。とにかく、勢いが 違う。ちなみに、この映画で主役を演じているSMAPの中居正広の納税 額、推定年収は、偶然にも宮部みゆきとほぼ同じだ。
 宮部みゆきの人気ぶりは図書館における作品の貸し出し状況からも判明 した。フリーターの”特権”を利用して、平日の昼間に図書館に出かけ、 「宮部みゆきの本を借りられるかどうか」をコンピュータで検索してみた のである。
 調査場所は、埼玉県郊外の市立図書館。2カ所の図書館の分をデータ化 している。「著者から探す」の項目から「宮部みゆき」を検索したら83 件のヒットがあった。新刊の「あかんべえ」(PHP研究所)や「模倣犯」 (上・下)など最近刊行された本を10冊調べたら、すべて「貸出中」の 表示が出た。さらに、この3年間に刊行された25件をすべてチェックし たみたら、図書館が所蔵する75冊のうち68冊は「貸出中」であった。 借りられる本は大活字本の3冊を含めてわずか7冊。書架をいくら探して も、彼女の本を1冊も見つけられなかったのも当然のことである。
 受付カウンターの女性に「1冊もないんですけど」と宮部ファンになり きって尋ねたところ、「人気のある作家ですからね。予約していただけた ら、返却されたときご連絡しますけど」との返答だった。売れっ子作家の 本を図書館で借りようとすれば、順番待ちを覚悟しなければならない。
 参考までに10位から30位までにランクされている人気作家3人の最 近刊を10冊ずつチェックしてみたところ、「貸出中」は約半分で比較的 にスムースに借りられることも分かった。どうも人気と貸し出し状況は比 例するらしい。
 もし読みたい本があったら、すぐ書店に駆け込んで購入するのが、私も 含め一般的なパターンと思うけど、図書館に納本されるのを待って「借り る」という我慢い読者も多いことも、今回の”リサーチ”で確認できた。
 納税額から計算して年収1億円を超えていると推定される作家は、西村 京太郎、宮部みゆきをはじめ、赤川次郎、内田康夫、浅田次郎、夢枕獏、 江國香織、森村誠一、真保裕一の9人。プロ野球選手やタレント、俳優、 歌手などに、そのレベルの高収入のひとたちがザラにいることを考えると、 文学界の頂点にいる人気作家たちの収入レベルはそれほど高くない。
 アメリカの人気作家の収入はやはりケタ違いで、映画の原作となる本を 書く売れっ子作家たちは著作料も高額とあって50億円前後を稼ぐといわ れる。そこまでいかなくても、日本でも年収5億円、1億円の作家が続々 と誕生してもらいたいものだ。作家を志す者たちは高収入だけをめざして いるわけではないけれど、目標や励みにはきっとなるはずだ。まあ、人気 作家の収入について語るより、まず自分の小さな懐具合を心配するのが先 決だけどね。(敬称略)

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