女流作家の台頭「直木賞」は該当なし。このふたつの賞は、流行作家への登龍門といわれ ており、作家を志す人であれば、目標にするはずだ。 今回の両賞の候補作品は計12作品。性別にみると男性、女性それぞれ 6人ずつで、文学界は「男も女も関係ない実力・能力主義」というイメー ジを与えてくれた。しかしながら女流作家が台頭してきたのは、最近10 年ぐらいのことである。 とくに直木賞は男性の独壇場だった、という印象がある。それを数字で 確かめたいと思って調べてみたら、やはり予想は的中した。 たとえば、70年代に直木賞候補になったのは208作品、このうち男 性作家は198人と圧倒的なシェアを占め、女性作家はわずか10人だけ であった。しかも女性作家で受賞したのは宮尾登美子ただひとりである。 エンターテイメントに関心を持つ女流作家が少なかったのか、男性に力量 のある作家が多かったのか、選考委員が女流作家の作品を理解できなかっ たのか、その理由は分からない。 ところが90年代になると、ジワジワと女流作家が台頭してきた。まだ 前半はそれほどでもなかったけれど、後半からは毎回2、3人が候補にあ がるようになったのである。90年代に直木賞候補になった作家は88人、 このうち女流作家は26人にもおよび全体では23%を占めるようになっ た。70年代はわずか5%にすぎなかったわけだから、急激なシェア拡大 といってもいいだろう。 受賞作家も小池真理子、乃南アサ、板東眞砂子、篠田節子、宮部みゆき、 高村薫と一気に増え、いま活躍している人気作家を生み出した。絶大な人 気を誇る宮部みゆきは90年代前半に男性作家を相手に何回も候補になり ながら落選が続き、5回目の候補作品「理由」で受賞した。この宮部みゆ きの孤軍奮闘が女性作家の台頭に火をつけたのではないか、と私は思う。 そして2000年代に入ってからも女流作家の快進撃は続いている。候 補作家28人のうち13人は女流作家で、そのシェアは32%にも跳ねあ がった。2000年代には候補作品の半数は女流作家が占めるようになる かもしれない。 (候補作品、候補作家は延べ数、敬称略) |