認められることと成功の秘訣 久和山武輝
2002年のノーベル賞で物理学賞に続き化学賞も日本人の受賞が発表さ
れた。物理学賞の小柴昌俊さんの研究は、膨大な国家予算を裏づけとす
る民間企業を含めた強力なバックアップがあり実現できた。巨大な装置
と多くの人員を必要とする国策的な実験による成果である。科学史に残
る実証実験をリードした小柴さんの力量と結果が評価されたのである。
化学賞の田中耕一さんの研究は、一民間企業でコツコツ行なわれた成
果である。田中さんは当該の企業内でも有名人ではなかったらしい。社
内にはカタカナで同姓同名の技術職のかたがもうひとりがいたので、確
認に手間取ったようだ。サラリーマン技術者として、社内的地位も主任
だという。日本化学会内でも著名人ではなかったようだ。博士号もなく、
電気工学出身ということで学会内では、日本独特のいわれのない壁があ
ったのだろう。日本の科学技術政策を推進している、総合科学技術会議
の学術議員先生にも知られていなかったようだ。
それでも、田中耕一さんはノーベル化学賞を受賞されることになった。
日本質量分析学会で1987年に発表した論文が受賞理由という。関係者に
は失礼になるが、そんな学会や田中さんが勤務する会社を知らないひと
が多い。論文発表から、15年も経過している。同氏は大学を1年留年し、
就職試験も第一志望の会社は落ちたという。入社した会社では、本来な
らば専門とする電気工学ではない分野の仕事を担当することになった。
心ならずも新しい分野でコツコツ研究した成果と技術を論文としてま
とめて、関連する学会に発表したことが、15年後にノーベル賞として認
められた。
ともかく発表することが認められる第一歩となる。文芸の分野でも同
様ではないかと思う。認められるまで、発表を続けることが成功の秘訣
である。事業に成功した事業家の名言にもある。事業を成功する秘訣は
成功するまで事業を続けることだという。発表の機会は多様化している。
皆様の作品を継続して発表することを期待したい。
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