儲ける仕事は昔も今も 久和山武輝
古来から儲ける仕事は、風俗、人身売買、金貸しが原点にあるようだ。
澤田ふじ子著「惜別の海」上下巻、新潮社刊を読んでその感を深くした。
同書は豊臣秀吉の妄想で李氏朝鮮王国を侵略した時代を背景とした小説
である。著者あとがきによると、新聞小説として執筆依頼された原稿が、
物語が完結することなく連載が突然中止された。重いテーマにも切り込
んでいるので、全国版の新聞小説だけに賛否の反響も大きく中止された
のだろう。その後二章分が追加執筆され、勇気ある編集者の努力により、
1998年に新潮社から完結発行された。
近江国の石工という職能集団が、時の権力者により海外派遣させられ、
苦難のうちに離別帰国した物語である。当時の日本と朝鮮両国の原典資
料も紹介されており、まったくの机上小説ではない。
金儲けと権力者の妄想が、いかに人間性を冒涜し悲劇を実現している
のか。現在でも人類の進歩が、いかにも少ないことが理解させられる。
金儲けの原点は、古今東西とも不思議なことに風俗と人身売買は共通し
ている。だれが考え出し真似たのかは、わからないが邪悪な行為は通信
技術が発展する以前から、地球をかけめぐり同時流行する。
さすがに現在では、人身売買は少なくなっているようだ。権力者の妄
想による直接他国への侵略行動も減っている。しかし、裏金融のように
かたちを変えた、そうした行為はより巧妙になっているような気がする。
人間性を無視し冒涜する行為は許されない。小説は歯止めとなり過去
の反省を教えてくれる。人間の根源を教えてくれる勇気ある小説を期待
している。勇気ある小説には抵抗も大きい。それでも読者は期待してい
ることを作家には知ってほしい。
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