不安がいっぱい  久和山武輝

  景気が低迷しているせいか、不安な情報があふれている。SARSは本当に日本には侵入していないのか。日本で発生した場合、どう行動すればいいのか。東海地震や東南海地震はいつくるのか。大地震が起きたときには、どうすればいいのか。東京電力では、夏場の最大電力使用時には大停電のおそれがあると警告している。北朝鮮が暴発し、核ミサイルが飛んでくるのではないか。都市銀行が再編成されたが、だいじょうぶなのか。大銀行になったので、破産した場合の影響力が致命的に大きくなるのではないか。日本経済が破綻したら、どうなるのか。とにかく不安な情報ばかりである。
 将来に対する不安に比例して、怪奇な犯罪や事件が増えているような気がする。日本は安全であるとは、過去の神話となってしまったのだろうか。こうした世情につけこんで、あやしげな宗教や団体がはびこってくるのではないか。宗教は心身の不安をいやし、やすらぎのなかに生きることを原点にしている。根拠のない不安をあおり、信者を取り込むのは、あやしげな宗教である。あやしいと思いつつ溺れてしまうのは人間の性(さが)なのだろうか。
 朝のテレビでは、7時直前は民放各局がいっせいに本日の占いを放映している。民放では、視聴率がとれてスポンサーが付くので占い番組を編成するのだろう。占いにも、将来の不安や危機をあおり占い漬けにしてしまう悪徳占い師もいると聞く。
 文芸の分野でも、これからは不安をあおる小説が売れるようになるのではと不安になる。やはり文芸の世界では、心の葛藤や不安から脱出するヒントとなり、元気が出る面白い作品を読みたいと思う。

●前のページへ