古代より歴史上の有名人には、影武者伝説がある。現在でもイラクのフセイン元大統領には、数名の替え玉がいたと報道されていたが、真偽のほどは不明となってしまった。影武者や替え玉を題材とする小説は多い。なかでも徳川家康を主役とする代表的小説に、南条範夫、隆慶一郎、榛葉英治の作品がある。
隆慶一郎「影武者徳川家康」上下巻、新潮社発行が圧倒的に面白い。同書は、初出は静岡新聞に連載されたもので、新潮文庫上中下巻に収録されている。戦国時代小説ではあるが、原典も随所に記載され、当時の時代背景が忠実に表現されている。現在のスペイン、ポルトガル勢力とオランダ、イギリス連合が何故競って日本を訪れてきたのか歴史の勉強にもなる。
影武者の徳川家康が、おのれの野望のために天皇制を利用して天下統一の謀略をいかに図ったのか理解できる。利用したのは天皇ばかりではない。主として外国勢力の中心である、キリスト教の宗派、国内の各宗教および被差別階層、敗軍の浪人なども操った。凄まじいものがある。
いくさ人(軍人)、政治家の怖さを思い知らされる。隆慶一郎が表現したかったのは、そのことだったのだろうか。考えさせられる作品である。
隆慶一郎は、脚本家としても多才であった。石原裕次郎主演など映画作品を多数手掛けている。映画テレビ脚本にくらべて、小説作品はすくない。
脚本作家は、隆慶一郎にとって影武者だったのかも知れない。
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