夢幻もの物書き道場 

<特別寄稿> 物書きになるには  山口敏太郎(作家)

 世の中に”物書き”になりたいと願う人が沢山いる。しかし、その為の 具体的な方法論が語られる事は少ない。理由は簡単である。とっくにデビュー しているプロライター、作家は商売仇を増やしたくないだけなのだ。  なんとも情けない現状ではないか。今こそ門を広く開くべきではないだ ろうか。
 そこで、本稿では筆者の経験を基にリアルな情報を皆さんにお届けした いと思う。
 その主な方法論は3つある。まず一つは何か公募に作品を出し賞を受賞 し、プロライターになるパターン、二つ目は、編集やデザイナー関連の企 業に就職し、雑誌や本の出版に携わり、フリーになるパターン、最後はコ ツコツと持ち込みで出版社に通い本の出版をするパターンである。
 現在のライター・作家における人口比率の中で、二番目の”編集・デザ イナーあがり”という人は意外に多い。業界にツテがあり、ルールもわかっ ている為、厳しいこの世界でも生き残りやすいのであろう。
 各自どのルートを辿るのかは、それぞれの判断にもよるが、どのルート にも落とし穴があるのでそれを列挙したいと思う。
 まず一見確実なコースに見える公募ルートであるが、これには意外にも 穴に入りやすいポイントがある。一番肝心なのは”公募の大将”にならぬ ように注意すべきである。この”公募の大将”とは筆者の造語だが、お山 の大将と同じで、いくつかの公募の賞をとるうちに
「自分は既にプロライターである」
「何度も賞をとって公募雑誌で名前も紹介されているので大物」
と錯覚し、それで満足してしまう事である。私の知人に九州の”公募の大 将”がいる。プロから言わせれば単なる”葉書職人”なのだが、自分はすっ かり大物気取りで周りが閉口してしまう状態の人物であった。
 確かに地方に在住していると、多少公募の賞をとるだけで”センセー” 扱いしてもらえるが、ギャランティーをもらってプロである。賞金ではな く、あくまでギャランティーがもらえてプロとして認められるのだ。この 一見同じに見える公募の達人とプロの違いをよく考えねばならない。出版 社から原稿料の発生する原稿の依頼がくるまではプロとはいえないのだ。  あまり公募にはまるとあざとくなるものだ。
「この言葉が受けるかな」
「このイベントなら、こういうキャッチがいいな」
と入選の為の創作をするようになると危ない。本末転倒である。当然プロ も出版社の意向を汲んで書くのは同じだが、その中に自分の味を盛り込む のがプロライターの腕の見せ所なのだ。
 筆者も実はこの公募あがりである。96年に学研ムー「ミステリーコン テスト」を「妖怪進化論」という作品で受賞し、今に至っている。なんと この「ミステリーコンテスト」の後に公募で5年程修業させてもらった。  何やら逆のような気がするが、それには理由があった。新人ライターが 大きい賞をとったからと言って、プロ活動をしてすぐ消えていく姿を見て いた私は、武者修行がしたかったのである。
 そこで公募雑誌にのっている全ての募集に応募し続け、修業を続けた。 妖怪・心霊・格闘技・プロレスなど自分の得意分野以外の仕事もこなせる ように、料理レシピからアートまで沢山の公募に募集し、30回以上の入 賞を経験してからプロの世界に舞い戻ったのである。
 だから余計にアマチュアのぬるま湯につかる人間の痛さが目につくのだ。 公募とプロの壁は恐ろしく厚い。しかし、それは打ち破れるものだ。受賞 歴を書いた企画書を持って、連載や単行本の立案に出版社に通うべきであ る。
 何も実績の無いアマチュアと違って、即戦力になるのだから、対応して くれる会社が10社で1.2社、採用してくれる会社が30社に1社はあ るだろう。1社でもチャンスをもらえば道は開ける。ようは実行力である。  次ぎに編集・デザイナーあがりのプロライターだが、これも先述したよ うに妙に人口が多い。私の仲間にもいるのだが、業界が長い人らしく、有 名人のゴーストをやったり、無記名本で荒稼ぎしたりしている。ライター 界では公募あがりはおとなしい人が多いのだが、この業界あがりの人は ”アウトロー”と言われる人がよく目につく。
 なんだかブラック・ジャックみたいで格好いいのだが、勘違いする奴が ここにもいる。後輩とかに業界に就職してからフリーになるのが確実とア ドバイスすると必ずこういう奴がいる。
「先輩の言うとおり、業界に就職しました」
「えっ、どこ?」
「○○印刷です」
 印刷会社も一応業界だが、フリーライターにはなれない。ツテもできづ らい。やはり一番いいのは大手出版社の下で、実務をやっている「編集プ ロダクション」である。俗に我々の世界では「編プロ」と呼ぶ。
 この手の企業に就職するなら可能性は広がる。ここで人付き合いが良く、 誰とでも仲良くできるならフリーランスで活動ができるだろう。
 最後に持ち込みからライターになる方法である。誰もが思いつく方法が このパターンである。これも何度も何度も諦めずに通う事である。
 当然、公募の入賞歴がなければ苦戦する事は必至だが、懸命な姿に力に なってくれる出版社は必ずあるはずである。100社を目処に、電話アポ、 飛び込みを繰り返すべきである。但し、電話応対だけで
「原稿は郵送してください」
と回答する出版社があるが、この場合は採用される可能性は低い。 やはり、知人や友人のツテを頼り、キーマンに会うのが一番良いようだ。 この出版社との打ち合わせの時には、いかに自分の作品が売れるか、今の 時勢にあっているかを明記した企画書が必要なのは言うまでもない。  なおここで気をつけないといけないのは、自費出版、共同出版にのって はいけない事である。私は決して自費出版や、共同出版を否定しない。む しろ個人の主張の場としてあるべきであると思うのだ。
 だが、商業出版を目指すプロ指向の者は、なるべく自費出版、共同出版 という”自分の考えがほぼ通る世界”という甘い汁を吸ってはいけないと 私は思う。
 プロとは出版社の要望に答えながら、その中で自分の味を出すべきもの であり、思うどおりにいかないものである。それをいかに自分の作品に仕 上げていくかが腕の見せ所なのだ。自費出版、共同出版にはなるべくなら 染まらない方が賢明である。
 最近、自費出版を180〜300万という高額で持ちかける企業がある が、刷り部数も1000部程度である。確かに書籍コードなどが高いのだ が、実際には100万前後ですれるものである。もしどうしても出したい 場合でも、先輩作家を頼り、その手の良心的な出版社を頼るべきであろう。
 以上、今回機会を頂き、3つのノウハウを雑駁であるが紹介させて頂い た。
 なお、夢を忘れない限り、可能性は誰にもあるという事も最後に付け加 えておこう。物書きになるという事は、夢を最後まで持ち続ける事なのだ。  みんな、決して負けるな。
<山口敏太郎〜妖怪関連著書>
http://www.esbooks.co.jp/myshop/youkaiou

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