インタビューする場合、よほど慣れた書き手でない限り、相手の話を録 音したほうがいい。そのほうが記事のスタイルによって、いろいろ書きわ けることができるからだ。それについて説明する前に、テープ起こしにつ いて簡単に解説しておこう。 テープ起こしは、インタビューした相手の言葉を、話したとおりに文字 に書き起こす作業である。これ実際にやってみると、けっこう大変手間の かかる作業だ。 まず、文字量が非常に多くなる。(人間って、しゃべるときは無駄な言 葉がびっくりするくらい多いんですよ)。それだけではない。脈絡がつな がらないことが多い。話を聞いているときは、聞く側がいろいろ推測した り、言葉を補足しながら聞いているので理解できるのだ。 テープ起こしでは、その余計な言葉も、脈絡のない話も忠実に文字に書 き起こさなければならない。この段階で、テープを起こす人が主観を混ぜ て整った文章にしてしまうと、客観的事実の資料としての価値がなくなっ てしまうからだ。 インタビューも他の取材も終わった。いよいよ原稿執筆に取りかかるこ とになる。 その際、まず考えるべきことは、記事のスタイル。自分の取材で得た事 実、その分析と評価、インタビューした人の言葉、そういったものを関連 づけながら展開していくのが、通常多く使われている記事のスタイルだ。 インタビュー記事だけで書く場合もある。話し言葉で、相手の言葉をで きる忠実に再現していく書き方である。この段階では、相手の真意にそっ て言葉を整理し、脈絡がつながるように書き手が書き直すことになる。 (雑誌のインタビュー記事を読んで、その人がその通りにしゃべったと思っ ている人はいませんか?どんな記事であれ、相手の真意がよりよくわかる ように書き手が苦労して文章にしているんですよ)。しゃべった通りに文 章にしたら、読者には意味不明になってしまうからである。 複数の人にインタビューした場合は、対談形式にすることもある。(雑 誌でよくみかけますよね)。ときには「覆面座談会」とか「匿名座談会」 といった怪しげな記事にすることもある。(これ話した人の正体が不明な のですから、まともに信用してはいけません。よく吟味しましょう)。 ここではオーソドックスに、自分が集めた事実、その分析、評価、取材 した人の言葉を交えて文章を展開していくとしよう。 こういうケースでも起承転結は必要になる。特に最後にどういう結末で 締めくくりたいかよく考える必要がある。 たとえば、ある実業家の成功物語を記事にするとしよう。ビジネスの各 段階を起承転結のベースとする。そのビジネスを始めたきっかけから入り (起)、創業期の苦労(承)、成功(転)、現在の心境とこれから取り組 もうとしていることで締める(結)。 その流れの中でその人の生い立ちや影響を受けた人たちの話を随所に盛 り込んでいく。最後の締めで、その人の人間性、人間的魅力を浮き彫りに する。その人の成功が単なる「運が良かった」からではなく、成功の陰に 人間的魅力があったからという締めくくりで終わる。 これはよく使われているし、実際私もよく使っていたパターンだ。お涙 ちょうだい的だが、これがけっこう受けるんだなー。わかってて書くこと があったんだなー(なんか恥ずかしくなってしまいますが)。 よくあるパターンの話のついでに、読者受けする書き方の例を一つご紹 介しておこう。それは原稿の冒頭をセリフで始めること。たとえばこんな ふうだ。 「私にとってはですね、やりたいことをやって人生が危なくなったとして も、全然後悔することはありません。でも、無難な道ばかり選んで歩いて、 やりたいことを何もせず人生を終わったとしたら、悔やんでも悔やみきれ ないでしょうね」 これはいまや丸々業界では不動の地位を築いた××社社長△△氏の言葉 である。 もっと浪花節調に書きたいなら、最後に「含蓄深い言葉だ」とか「彼の 人生哲学を象徴している言葉だ」と付け加えておこう。(時々雑誌の記事 でみかけませんか?これ、けっこう使ってます。受けるんですよ。ほんと)。 別に読者受けを考える必要もなく、社会的使命として真実を追及すると いう方向性もある。 企業犯罪、政治家の犯罪、社会悪、そういった正義の闘いをノンフィク ション作家として実践している人もいる。私は佐野真一をその筆頭にあ げる。こういう道を進みたい人は、先駆者の著書をよく読み、取材方法か ら分析方法、哲学などを学ぶとよいだろう。 4回にわたってノンフィクションの書き方について紹介してきたが、参 考になっただろうか?時間を見て、教材としてより豊富により詳しくまと めたいと思う。 |