夢幻流もの書き道場 上山明彦著

協力して出版の底上げを−−2005年度後期の取り組み(1)

 私はインターネットを利用した電子出版が、書籍出版業界の停滞を打破する可能性を持っていると思っています。その可能性を現実のものとするためには、いくつか乗り越えなければならない壁があります。
 その壁の一つが、電子出版サイトの「でじたる書房」さんと提携することによって乗り越えることができました。詳しくは後で述べます。
 まず、皆さんに出版業界の現状について、ここでお話しましょう。

 関東地区に2,000社、全国で4,000社近くあるといわれている出版社のほとんどが、常に経営に苦しんでいます。これを数字でとらえると、出版業界の実情がよくわかります。
 2001年の取次を経由した出版物全体の売上は、2兆3250億円。この内、書籍が9455億円、雑誌は1兆3794億円となります(出所:出版科学研究所、「出版指標・年報」)。
 この数字を他の業界と比べてみましょう。トヨタ自動車の2004年3月期の連結売上(全世界の同社の売り上げを結合したもの)が、17兆2947億円。日本国内だけで約3兆円です(これは2000年に、私が新聞で読んだものですが、そのデータが今見つかりません)。
 出版業界全体の売り上げは、トヨタ1社の国内売り上げにも及びません。

 書籍だけを見てみましょう。「書籍」というのは、書店に並んでいる本のすべてを含みます。小説だけではなく、実用書、参考書などすべてが対象です。
 書籍の9455億円という数字は、日本での2000年度の宝くじの売り上げ額9500億円に相当する程度の規模です。楽天の2004年度(12月期)の売上高は455億6700万円。ライブドアの2004年度(9月)の売上高は308億6,800万円。
 楽天が約20社、あるいはライブドアが30社集まれば、書籍の売り上げに相当することになります。
 書籍のジャンル別売り上げの数字が欲しいところですが、私は入手しておりません。ただ、売上の割合は実用書、ハウツー物、アダルト物が大きく、文芸物が小さいという傾向があることは間違いありません。
 
 こうやって数字を見てきてはっきり言えることは、「小さなパイ」を分け合っているというのが、書籍出版の現状であるということです。読者にとって読みたい本がないから売れないのか?出版社にとって、出したい本を出しても売れないから、できるだけ売れることがわかっている本しか出せないのか?いろいろな疑問が出てきます。

 こうした状況にも関わらず、発行される本の数は、膨大な数になっています。
 新刊発行点数は、2001年で69,003点(「1点」の意味は、1作品に相当する。1点に付き、数百冊から数千冊の冊数が取り次ぎに委託配本される)。一日約300点の新刊書が、書店に配本されています。これを冊数にすると、一日に書籍が200万冊、雑誌が450万冊という膨大な数に上ります。
 資金を回転させるために、新刊を出さなければならないという構造的な問題があるためです。
(続く)

 (2005.6.26)

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