夢幻流もの書き道場 上山明彦著

他の作家とは違った「サムシング」

 「新人がデビューするときには、今までの人とは違ったサムシングを訴えなければいけないんだなあ」(阿刀田高著、『ミステリー主義』、講談社文庫、13頁)。
 阿刀田高は都はるみが新人としてデビューしたとき、そういうふうに感じたという。「サムシング」とは、独創性のことである。小説にしても、文章がうまいのは当たり前のことで、他の作家とは違う何かが必要不可欠なのである。
 先日インタビューした早乙女貢は、明治政府を打ち立てた薩摩・長州賛美の歴史観が強い中で、歴史の真実を書かなければならないという自分の使命を感じて小説家になった。それもまた早乙女貢の独創性となった。
 独創性を言い換えると、「あなたにしか書けないこと」であり、それが読み手にとって共感でき、あるいは感情移入できる普遍性を持っていることだ。「あなたにしか書けないこと」であっても、読者にとって無意味なことでは独創性とはいえない。とはいえ、現代の読者が受け入れなくても、将来の読者がうけいれてくれるかもしれない。そこに小説のむずかしさがある。
 結局のところ、読者に受け入れられるかどうかは結果である。書き手は自分の書きたいこと、伝えたいことにこだわって書き続けるしかないのだろう。参考になるような、ならないような結論で恐縮だが、とりあえず参考にしていただきたい。

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