「5W1H」を正しく理解しよう 文章の書き方の説明に「5W1H」で書きましょうと書かれていることがあります。 これを小説やエッセイに適用して書いてしまうと、文芸作品ではなくなるおそれがあります。それについてここで説明しましょう。 「5W1H」とは、英語で表現される次の5つの「W」と1つの「H」を取ったものです。 When(ホエン) いつ Where(ホエア) どこで Who(フー) だれが What(ホワット) なにを Why(ホワイ) なぜ How(ハウ) どのように 読者に正しくできごとを伝えるには、この5W1Hについてすべて書かれていなければなりません。 これは新聞・雑誌、テレビのような事件や様々なニュースを伝える記事、本ならばノンしくションと呼ばれる事実に基づいた作品にあてはまります。たとえばこうなります。 「2004年10月18日、小泉純一郎首相は政治団体を巡る資金流用疑惑について、衆院予算委員会で、お金は郵便切手と電話代に使用したもので、問題がないと釈明した」。 学生の皆さんの場合では、校内新聞、観察日記などを書くときに「5W1H」に沿って原稿を書くと、いい文章が書けます。 では、小説やエッセイのような文芸作品で「5W1H」に沿って書くとどうなるでしょうか? ノーベル文学賞を受賞した川端康成の名作『雪国』の書き出しを読んでみましょう。 国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。 向側の座席から娘が立って来て、島村の前のガラス窓を落した。夜の冷気が流れ込んだ。娘は窓いっぱいに乗り出して、遠くへ叫ぶように 「駅長さあん、駅長さあん」 明りをさげてゆっくり雪を踏んで来た男は襟巻で鼻の上までを包み、耳に帽子の毛皮を垂れていた。 ここまで読んでも、いったい誰が、どこで、なにを、なぜ、どのようにしたのかよくわかりません。「島村」という個人名が出ているので、どうやらこの人が主人公らしい、雪国に何かの用事で来たようだ、ということくらいしかわかりませんね。 文芸作品は、文章として書かれていないところでも、読者に想像力を要求します。読み進むにつれて、ストーリーの全体がわかり、事件やできごとの全体像がわかるようになります。 もしこれを記事やノンフィクションのように、最初からできごとが正確にわかるように書いてしまったら、味もそっけもなくなってしまいます。 「昭和○○年、○○月○○日、島村は汽車に乗って、長いトンネルを抜け、新潟県に着いた。一面雪景色になった。....」 でしょ? ちなみに、「国境」という文字は「こっきょう」とも「くにざかい」とも読めます。どちらが正しいのか論争があるようですが、どちらも正しいと言えるようです。 |